姐御な私と無口なアイツ。
「あ……さっきは、ありがと」
ようやく呼吸も回復して、私はさっき言いそびれた、転びかけたときのお礼を言った。
涼介はちらっとこちらを見て──やはり、表情を変えることなく言った。
「……転ぶなら走るな」
「…………」
転ぶなら走るなって……私に遅刻しろと言うのかこいつは。
いや、どうせ遅刻だったけどさ……てか、転んでないし。
憮然と頬を膨らまして、私は涼介から目をそらした。
* *
「おはよう麻奈ー!」
なんとか一限が始まる前には間に合い、HRが終わったあとの休み時間、私たちが教室に着くと、それを見つけたクラスメイトに声をかけられた。