301号室、302号室、303号室
女はそのまま、毛布で包み込むようにして僕を横から抱き締めた。
びっくりしたけど、不思議と拒むような気にはならなかった。
「レミの・・彼女の声を聞いてると、安心するんだ」
「うん」
「ほんとは分かってるんだよ、こんなこと続けても、どうにもならないってことくらい・・・」
分かってる、けど。
彼女と一緒に落ち込んで、彼女と一緒に泣いて、彼女と一緒に、一日を終えたいと思ってしまうんだ。
「いいなぁ・・・彼女」
耳元で、女が呟いた。
僕の首に抱き着く腕の力は、余計に強まる。
更に肌は密着し、時折首筋にかかる彼女の吐息がむず痒い。
「私ね、誰かに心から愛されたこと、ないんだと思うんだ」
・・・・・・?
その言葉、どこかで聞いたような・・・・
「私、昔から来るもの拒まずなとこあってさ、女にも男にも、ビッチだの尻軽だのって罵られて、嫌われてきたんだ」
「うん」
「・・・って話をね、昨日の夜、湊くんにしたの、」
「うん」
「そしたらね、言ってくれたんだ」
「・・・・・」
「みんなちゃんと君と向き合おうとしないで、自分が傷付かないような生き方をしているだけだって」
「・・・・・」
「だから君が余計に傷付くことになるんだ、って」
ああ・・・・
「まあ、湊くんは覚えてないと思うんだけどさ・・・」
思い出した。