301号室、302号室、303号室




寂しい思いさして、ごめん



耳元で、陸人が呟いた。

彼はいつだって、真っ直ぐに私と向き合ってくれていた。
彼が素直に自分の気持ちを伝えてくれるから、私も自然と素直になれるんだ。

知っていたはずなのに、私は何を不安になっていたんだろう。



「ケーキこうてきたから、一緒に食べよ?」



手首にぶら下げた袋を持ち上げて、微笑んだ。

そっか、今日って、クリスマスイブだっけ。

こんなふうに、二人っきりで過ごすクリスマスなんて、いつぶりだろう。
もう、記憶にもない。

今、この瞬間、街中にいる全てのリア充たちの気持ちが、理解できた気がした。

二人きりのクリスマスが、こんなに幸せだったなんて。



「そういえば仕事は?大丈夫なん?」


「ああ、うん、だいじょうぶ。上司に頭下げて、なんとか。」


「そっか・・・うちのせい、やろ?・・・ごめん、」


「まーたそんな顔するー!これくらいどってことないって!俺、案外真面目に仕事しとるんやで?それに、俺がしたくてしたことなんやから、涼子が気にする必要は全くない!分かったか?」



私の両頬を、指で摘まんで、にゅーと引き伸ばす。
頬を引っ張られてるせいでうまく喋れない口で、ふぁい、と返事をすると、よし、と言って、手を離された。
ほっぺた、ヒリヒリする。
目と同様に、頬も腫れたらどないすんねん、と文句が浮かんだけど、それより何より嬉しかったので、飲み込んだ。



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