301号室、302号室、303号室





「それ聞いて、どうするんですか?」



うっ。うまく切り返されてしまった。
ただ、この間を埋めるための質問だったのに。

でも、このまま沈黙が続くのも嫌だしなあ・・・。



「あんまり、話したことないから、三木くんがどんな人なのか知りたくてさ。たいした理由じゃなくて、ごめんね。」


「・・・・・いますよ」


「えっ?」


「好きな、人」



この流れから、まさか答えてくれるなんて思わなかった。
ほんと、さっきから彼の言動は予想外すぎて、ついていくのに必死になる。

好きな人がいるなんて、まるで他人事みたいに言ってのけたその無表情からは、彼の気持ちを読み取ることができない。
好きな人がいることくらい、当然のことなのに、そんなことすらも意外に感じられる。

三木くんが好きになる人って、一体どんな人なんだろう。



「俺からもひとつ、質問していいですか?」



質問・・・?

三木くんも少なからず私に興味を持ってくれていると思って、いいのだろうか。

かと言って、なんでそんなにうるさいんですか?とか、少しも黙ってられないんですか?とか、また嫌味みたいなことを言われるかもしれない。
いや、その可能性のほうが、きっと高い。

彼の言葉に反応し、その意味を考えて、いちいち緊張してしまう。


少し怖いけど、質問ってなんなのか気になるし・・・

うん、と頷いて、彼の反応を伺うことにした。

目は、ばっちり、合ったまま。

今朝、目を覚ました時ほど至近距離ではないのに、小さく息を吸った薄い唇が、緊張感を増幅させていく。


ドキドキ

ドキドキ

ドキドキ



「中村さんは、なんであんなのと、付き合ってるんですか?」




・・・・え?


それって、


どういう、意味?



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