301号室、302号室、303号室
「三木くんって、料理するんだね」
「はい。料理以外にも、大体のことは自分ひとりでできます。」
手際よく、食材を切り分けていく姿に、目が釘付けになる。
料理男子って、ポイント高い。
まあ、言い方はちょっと、偉そうだけど。
「器用だね」
「はい、だから、中村さんは座っててください。そこにいられると、集中できないんで。」
また嫌味。
折角、ちょっといいかもって、思ったのに。
まあ私には、亮太がいるんだけど。
渋々ソファーに腰を下ろす。
・・・・はぁ、
実はさっきからずっと、「なんであんなのと、付き合ってるんですか?」という質問が頭の中をぐるぐる回っていた。
本当、なんでだろ。
付き合い始めた当初は、そっけなくても許すことができた。
なんというか、たまにちょっと優しくされただけで、全てが覆ってしまうくらい。
それくらい、彼のことが好きだった。
だけど今はどうだ。
マンネリ化したというのもあるけど、優しくしてくれたり、女の子扱いしてくれることが、極端に減った。
だから私の、彼に対する気持ちも、徐々に離れている。
同棲を始めたのがいけなかったんだろうか。
亮太は、自分のプライベートの時間がないことにストレスを感じているように見える。
私も、彼を縛り付けて嫌われるのは嫌だし、詮索したら極端に不機嫌な顔をするのも知っていたので、何も言えなくなった。
こんなことなら、早いところ別れてしまったほうがいいのかもしれない。
でも、
それでもまだ、
付き合って、優しくされて、愛を囁かれて、幸せだった、ドキドキしてた、亮太のことが大好きだった気持ちは、簡単に消えてくれない。
この関係に、ケリをつけることができないんだ。