301号室、302号室、303号室




彼の影が、私の顔にかかる。

また急に、距離を詰められた。

膝の上に抱えたお皿のフチを、ぎゅっと両手で握る。



「俺が今まで、どれだけ必死になって距離置こうと頑張ってきたか、分かりますか?」


「えっ、と・・・」



お皿を握る手に、更に力が加わる。

また、初めて見る顔をした。
それに、普段無口な筈の彼がこんなに喋ってる。

どうしよう・・・・
私、怒らせた・・・?



「それが・・・中村さんがそんな顔するだけで、全部、無意味になる・・・ん、ですよ」


「三木、くん?」


「普段、使い慣れない敬語なんか、使って・・・そしたら、うまく距離置いたまま、関わっていけると思ったん、ですけどね?」



彼の口調が、たどたどしくなっていく。



「でも、無理でした・・・昨日からずっと、中村さんの顔見るたびに、堪えるのに必死でした・・・・」



私、もしかして、今・・・・



「ねえ、中村さん・・・もう、いい加減、あいつと別れてくれませんか?」



告白、されてる・・・・?




< 55 / 61 >

この作品をシェア

pagetop