301号室、302号室、303号室
真っ直ぐに私を見るその顔は、やっぱりすごく整っていて、見とれてしまうほど格好いい。
思わず、二つ返事で「別れる」と口走ってしまいそうになる。
でも、やっぱり、私は・・・
「でも、中村さんは、あいつが良いんですよね」
また、私の表情で察したのだろう。
彼は少し眉をしかめた。
そんなこと、こんな顔で訊かれたら、なんて答えればいいのか、分からなくなる。
「そんな顔、しないでよ・・・」
思わず俯くと、三木くんの影が近付いてくる気配を感じた。
彼の、呼吸が聞こえる。
ちかい・・・・
体が硬直して、動かない。
それに、心臓がうるさい。
頬に彼の髪が当たってくすぐったくて、顔を反らすと、彼の唇が耳に触れた。
「それ、こっちの台詞」
低く、甘い声が、私の聴覚のすべてを支配する。
耳はおろか、脳までとろけてしまいそうだ。
「ず、るい・・・」
「じゃあ、もっとズルいこと、言ってもいいですか?」
耳から、彼の呼吸が伝わって、焼けるように熱くなる。
耳、赤くなってそうで、恥ずかしい。
「昨日、寝てた中村さんに、こっそりキスしました」
・・・・・・
・・・・・・えっ?
「うぇえええ!?」