301号室、302号室、303号室
キス・・・したの?
私たち・・・・
反射的に口を両手で押さえて、顔を上げると、彼もさっきより少し離れた位置から、私を見ていた。
寝てる間にキス、とか・・・
しかも、亮太、いたんじゃないの・・・?
「り、亮太は・・・?」
「大丈夫です、見られてないんで。」
「そっ、か」
「・・・安心しました?」
首を傾げて、私の顔を覗き込むように、彼は訊いてくる。
安心・・・・?
あれ?
私、今、一瞬
見られてなくて、残念って、
思った・・・・?
「それとも、残念って、思いました?」
「えっ!?」
「図星ですか、本当、分かりやすい」
また、三木くんが優位になった。
余裕のある口調と、まるで感情が読めない顔で、彼は続ける。
「それって、あいつを妬かせたかったからですか?それとも・・・・」
「・・・・・・・っ!」
また、耳元に吐息がかかるくらいまで顔を寄せた。
突然のことに、私は固く目を閉じる。
「あいつと別れるきっかけが欲しかったから、ですか・・・・?」
彼は、自分の声の扱い方をよく分かってる。
そんなふうに囁かれたら、心が動いてしまっても、仕方ない。
不思議と、身体中の力が抜けていく。
こくり、と無意識に頭は縦に揺れていた。
なんだか、後者に、酷く納得できてしまったから。
「俺も、少し、勘違いしていいですか?」
その言葉を合図に、頬に熱が走った。
その熱の元は、彼の、唇。
頬に口付けされたのなんて、初めてだ。
それから彼は、耳から首筋にかけて、数回、触れる程度のキスを落としていった。
彼の唇が、私の肌に触れる度、その箇所が熱を帯びはじめる。
そして、今度、彼の大きな手が私の頬を包んだ。
「目、閉じてください」
あともう少しで、鼻がくっつきそうな距離。
これは、間違いなく、キス・・・される。
彼とのキスは、これで二度目になるのか。
でも、私にとってはこれが、一回目みたいなものだ。
彼の視線にやられて、少しでも緊張が緩和するかと、大人しく目を閉じる。
けど、視界が真っ暗になったことで、彼が今、どれくらいの距離で私を見ているかが分からず、余計に緊張してしまった。
完全に、逆効果だ。
でも、彼の顔がじりじりと近付いてきている気配は察した。
私の唇の数センチ先から、彼の吐息を感じて、あともう少しで唇が触れる、と、ぎゅっと、より強く目をつぶる。