シュガーレスガール
ヤキモチ
「 いらっしゃいませ 」
開店して、まもなく入ってきたひとりの客。
両手には何枚もの紙、そして右手に三本の鉛筆。
カフェには到底似つかわしい格好だ。
しかし俺は彼をよく知っている。
「 薫くん、あれなんだろうね 」
緋依子さんがすかざず耳打ちする。
「 七瀬さんっていう、常連さん 」
「 へえ… 近くに住んでるの? 」
「 はい、裏のアパートに 」
俺が説明しているのを うんうん、と頷いて聞きながら
永戸さんを興味津津にながめる緋依子さん。
ここで俺は、ものすごいことに気付いてしまった。
「 あたしオーダーとってくるね 」
「 え、ちょっとま… 」
俺が言い終わる前に緋依子さんは行ってしまった。
そして、笑顔を振りまいて七瀬さんに話しかけている。
…あぁ、やっぱり。
緋依子さんと永戸さんのツーショットは
美男美女、まるで絵に描いたようなふたり。
悔しいけれど、七瀬さんは本当にかっこいい。
オンナ遊びも激しいだけあってルックスは完璧だ。
緋依子さんと並んでもちっとも劣らない。
出来れば、あのふたりは近付いてほしくない。