シュガーレスガール
第一章 運命のいたずら
予感
秋の終わり、冬の足音が近づいてきたある寒い日のこと。
彼女はなんの前触れもなく俺の前に現れた。
── カランカラン
聞きなれたドアベルの音がする。
片手で持ったトレイの上のコーヒーに気をつけながら
俺はゆっくりと振り返った。
「 いらっしゃいま… 」
そこに俺がみたものは、
世に在る『 容姿端麗 』という褒め言葉は
彼女のためのものだったのだろうか、
とまで思わせるくらい完璧な女性だった。
「 あ、の 」
言葉を見失っている俺に彼女が近づいてくる。
彼女が歩くスピードに合わせて
俺の鼓動も徐々に高まっていくのが分かった。
「 … はっ、はい! 」
「 アルバイトの面接に伺った西尾です、けど… 」
「 すっ、すみません、すぐ呼んできます! 」
動揺しっぱなしの俺を見てクスリと笑う彼女をその場に残して
いそいで厨房にいる親父の元へと走った。
「 店の中を走るな、バカ息子! 」
「 バ、バイトの面接に…きれいな、ひとが! 」
我ながら自分のあまりの慌てぶりには驚いたが
親父はそれには動じずにエプロンを外しながら、さらりと言う。
「 あぁ、奥の部屋にお呼びして 」