ペンギン家政婦サービス
少女の話はおおむねこうだった。
動物使いに助けられた動物は人間になってしまい、「恩返し」をしなくては動物に戻れない。
そうとは知らずアスマが子どもの頃に助けてしまった動物がこの世には7匹存在して、それをアスマは責任を持って動物に戻してあげなければならない。
動物たちを元の姿に戻す手伝いをするため、ベアトリスに依頼されて自分がやってきた。
「…ちなみに、7匹のうちの1匹がわたしっていうわけです」
ペンギンだから「1匹」じゃなくて「1羽」ですけどね、と少女は胸を張る。
「このお手伝いがわたしにとっての『恩返し』なので、アスマさんが全ての動物を元に戻したら、わたしもペンギンに戻ります」
「ちょ、ちょっと待て。話はわかったけど…そんなの信じられると思うか?」
「思う」
「思うなよ。そんな突飛な話、突然信じられるわけないだろ」
「しょうがないですね、アスマさんは」
少女は困ったような顔をした。
「今まで妙に動物に好かれたことはありませんか?やたらとなつかれて困ったりしたことは?」
「それは…」
アスマは今までの人生を思い返す。
そういえば…
「…ある」
「でしょ?動物を引き寄せる体質、それが動物使いの証なんです」
「…」
「もう今夜は遅いですから、とりあえず入れてください。わたしは『恩返し』をしにきただけじゃなくって、きちんと家政婦としても雇われてきたんです。仕事しなくちゃ」
アスマが黙って考えていると、少女はさらりと付け加えた。
「詳しくは、明日キヌガサさんに聞きましょう」
キヌガサ?
なんでここであいつの名前が…
「キヌガサに何の関係があるんだ?」
「この辺の動物を取り仕切っているのはキヌガサさんですから」
「どういうことだ?キヌガサも動物使いなのか?」
「キヌガサさんは人間じゃありませんよ。カラスです」
カラス。
あの白ずくめの男がカラス…。
アスマはますます混乱した。
「それも、ただの動物じゃありません。妖怪とか、神様に近い存在ですね。八咫烏って、聞いたことあるでしょ?」
妖怪?神様?
もう、ファンタジー過ぎてついていけない。
そんなことより…
「おれには、人間の友達はいないのか…」
がっくり。
昔から人間より動物に好かれる体質ではあったが、この1年間友人だと思っていた奴が人間じゃなかったなんて…。
「まあまあ、いいじゃないですか、そんなこと。友達は友達です」
言いながら、少女は自分の背後から大きな掃除機を引きずってきた。
「なんだ?その掃除機…」
「決まってるじゃないですか、アスマさんの部屋をお掃除するために買ってきたんですよう」
「掃除機ならうちにあるけど」
「え、嘘」
「いや、あるだろ普通」
「でもこれ高かったんで、経費で落としておいてください」
「経費…って、まさかおれが払うのか!?」
「はいっ」
少女は天使のようなーーいや、ペンギンのような笑顔でうなずいた。
動物使いに助けられた動物は人間になってしまい、「恩返し」をしなくては動物に戻れない。
そうとは知らずアスマが子どもの頃に助けてしまった動物がこの世には7匹存在して、それをアスマは責任を持って動物に戻してあげなければならない。
動物たちを元の姿に戻す手伝いをするため、ベアトリスに依頼されて自分がやってきた。
「…ちなみに、7匹のうちの1匹がわたしっていうわけです」
ペンギンだから「1匹」じゃなくて「1羽」ですけどね、と少女は胸を張る。
「このお手伝いがわたしにとっての『恩返し』なので、アスマさんが全ての動物を元に戻したら、わたしもペンギンに戻ります」
「ちょ、ちょっと待て。話はわかったけど…そんなの信じられると思うか?」
「思う」
「思うなよ。そんな突飛な話、突然信じられるわけないだろ」
「しょうがないですね、アスマさんは」
少女は困ったような顔をした。
「今まで妙に動物に好かれたことはありませんか?やたらとなつかれて困ったりしたことは?」
「それは…」
アスマは今までの人生を思い返す。
そういえば…
「…ある」
「でしょ?動物を引き寄せる体質、それが動物使いの証なんです」
「…」
「もう今夜は遅いですから、とりあえず入れてください。わたしは『恩返し』をしにきただけじゃなくって、きちんと家政婦としても雇われてきたんです。仕事しなくちゃ」
アスマが黙って考えていると、少女はさらりと付け加えた。
「詳しくは、明日キヌガサさんに聞きましょう」
キヌガサ?
なんでここであいつの名前が…
「キヌガサに何の関係があるんだ?」
「この辺の動物を取り仕切っているのはキヌガサさんですから」
「どういうことだ?キヌガサも動物使いなのか?」
「キヌガサさんは人間じゃありませんよ。カラスです」
カラス。
あの白ずくめの男がカラス…。
アスマはますます混乱した。
「それも、ただの動物じゃありません。妖怪とか、神様に近い存在ですね。八咫烏って、聞いたことあるでしょ?」
妖怪?神様?
もう、ファンタジー過ぎてついていけない。
そんなことより…
「おれには、人間の友達はいないのか…」
がっくり。
昔から人間より動物に好かれる体質ではあったが、この1年間友人だと思っていた奴が人間じゃなかったなんて…。
「まあまあ、いいじゃないですか、そんなこと。友達は友達です」
言いながら、少女は自分の背後から大きな掃除機を引きずってきた。
「なんだ?その掃除機…」
「決まってるじゃないですか、アスマさんの部屋をお掃除するために買ってきたんですよう」
「掃除機ならうちにあるけど」
「え、嘘」
「いや、あるだろ普通」
「でもこれ高かったんで、経費で落としておいてください」
「経費…って、まさかおれが払うのか!?」
「はいっ」
少女は天使のようなーーいや、ペンギンのような笑顔でうなずいた。