だいすきのすき

「意外だな。小西さんって、ああ言うの断らない人だと思ってた」

「…………」


廊下の片隅で立ち尽くしていた俺の背中から、不意に聞こえた声でそちらを振り返る。


そこに居たのは、前に雨花と教室で話をしていた図書委員の男だった。


「さすがにフられた元カレに伝言って気まずいよね」

「なんで知ってんだよっ……」

「前に放課後の教室から、泣きそうな顔で飛び出して行った彼女を偶然見かけたんだ。……で、中を覗いたらキミが立ち尽くしてたから、告白してフられたか別れ話かなって思ったんだ」


偶然にもあの別れ話の現場を見られていたらしく、あの時のことを思い出して俺の気持ちは更に重たくなっていく。


「……はぁ」

「あの様子から、てっきりキミが小西さんをフったんだって思ったんだけど……その割にキミの方まで落ち込んで見えるな」

「…………」


さっきから知らん顔を決め込む俺に構わず、

「俗に言う……失くしてようやく、大切さに気付いたってパターンか。なるほど」

涼しい顔でズケズケと容赦なく痛いところをついてくる。

それがあながち外れて居ないから余計に質が悪い……。
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