だいすきのすき
汚れや破れは多少はあれど、貸し出し者がすぐにわかってしまう図書室の本に、書き込みがされてることは稀だ。

それを訝った雨花が更にページをめくれば、

「また……っていうか、他のページにも円がある」

パラパラとめくられたページのあちこちに円がされていた。

その円の数からようやく、意図的にされたモノだと気付いた雨花が、文庫本を最初のページからめくり始める。


その円は昼休みに俺が、図書委員の提案でしたモノだった。


「う……か……へ……なん……」


赤い円を最初から繋げて、雨花が呟くように読み上げていく。


雨花へ。
何度も傷付けてごめん。
俺のこと許さなくてもいい。
信じなくてもいい。
いつでも優しくしてくれたこと嬉しかった。
雨花が俺を嫌いになっても、俺は好きだから。


口で伝えられないなら、別の方法で伝えれば良い。

そう言ってアイツが提案したのが、文庫本の文字を使って気持ちを伝える方法だった。

その為にわざわざ図書室から人払いまでしてくれたんだ……。
絶対に雨花に俺の気持ちを伝えてみせる。
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