だいすきのすき
雨花の家にお呼ばれした日から数日。


いつもの別れ道まで雨花を送ってから、そのままマンションの近くのコンビニへと足を運んだ。


出張で母さんが家を空けることは珍しくない。
その度にコンビニで適当に夕飯を用意するのも、ずっと昔からの慣れっこで。

好きなモノが食べられて羨ましいとか、そんなことをたまに言われたりしたけど、俺は良いとも悪いとも思ったことがない。

だってこれが俺の中の当たり前で、憂いても羨んでも仕方ないってのを小さい頃からの経験で知ってる。


柄にもなくこんな事を思うのは、雨花の家で食べた賑やかなご飯が思いの外楽しかったせいなのか……。


コンビニのショーケースの前に立ち尽くしてぼんやりして居ると、


「……?」


制服のポケットで携帯が震えて、着信を知らせた。


画面に映し出された名前はさっき分かれたばかりの雨花だった。


雨花からの電話なんて、付き合い始めてから初めてのことだ。


「雨花?」


何かあったのかと訝りながら電話を取ると、


「ごめんね、いきなり電話して……」


恐縮した雨花の声が聞こえて、電話越しでも雨花の態度って変わらないんだなぁ……なんて、思ってしまう。
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