だいすきのすき
仲の良い女子ばかりで集まって喋る集団や、頬杖ついてつまらなそうに携帯をいじくる女子の姿がチラホラ。


よくありがちな休み時間の光景の中で、


「あっ」


ある一人の女の子が目に留まった。


自分の席で静かに文庫本を広げてる大人しそうな女子。


うっすら茶色い髪は多分地毛なんだと思う。
長さは肩より少し上で、体もちっこくて童顔でなんかコケシみたいだ……。


そのコケシちゃんは見るからに地味で、如何にも恋愛に奥手そうなウブな匂いがプンプンする。


俺の探し求めてる初心者マークの練習台にピッタリだ。



「なぁ。その晴奈ちゃんってすぐに返事しなきゃ駄目なのか？」


「いや。とりあえずテストとかあるから、落ち着いたら連絡するとは言ってあるけど」


「んじゃ、とりあえず保留にしといて」



にっと笑って告げた俺に、汰一は不思議そうな顔で頷く。


「なんかヤな予感がする……」


「大丈夫大丈夫。ちょっと考えたいだけだって」


さっきまで童貞であることに頭を悩ませていた俺の答えに不審そうな表情をする航平はさすがに鋭い……。


ホントのことを言ったら多分怒られるから、この計画は絶対内密に進めよう。


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