恐愛同級生
「でも、今日手持ちがないからうちにあるものを食べよう」
「えっ……?」
予想外の翔の言葉に一瞬うろたえる。
「インスタントラーメンだったらあると思うし」
「い、いいよいいよ!!そんなの悪いもん!!」
「そんな遠慮しないでよ。一緒にキッチンに立って料理作るのって何か新鮮だし」
「まぁそうだけど……」
「莉乃の手料理、食べてみたい」
楽しそうに言う翔とは対照的にあたしの焦りは募る。
「で、でもさ今日はどこかに食べに行こうよ?ねっ?今日お小遣いもらったからたまにはおごるよ~。いつも翔におごってもらってばっかりだったし」
サッと立ち上がり、カバンを掴むと肩に掛けて扉の方に足を進めたその時。
「莉乃」
翔はあたしの足首をガシッと掴んだ。
「本当は早くうちから出たいんだろう?」
上目遣いでそう問いただされて狼狽える。
翔は全てを見透かしている。
何も答えられずにその場に立ちすくむあたしの足首から手を離すと、翔は立ち上がり部屋の扉に立ちはだかった。
まるであたしがこの部屋から出ることを拒むように。