恐愛同級生

あたしはその手をサッと交わして立ち上がると翔を睨んだ。

「ポストに赤い手紙を入れたのも翔でしょ……?翔ならあたしの家を知ってるはずだもん!!」

「俺じゃない……。俺はそんなことしない……!!いくら莉乃でも、いい加減怒るぞ!?」

目を充血させて怒鳴る翔。

「翔はあたしをどうしようとしていたの……?あたしが元カノみたいに飛び下りるのを望んでいるの!?翔の目的は一体なに……!?」

「俺はただ莉乃を俺だけのものにしたいだけだよ。他の奴にとられなくない。莉乃、俺の気持ちわかるだろ?俺はただ莉乃を愛してるだけだよ」

さっきとは一転して子供をあやすような優しい声であたしを諭そうとする翔。

感情の起伏があまりにも激しくてついていけない。

「分からない。翔の気持ちなんてわかるわけない!!愛してるからってストーカーまがいのことをして許されるわけないよ!あたしがどんな気持ちだったかなんて、翔に分かるはずがない!!」

あたしはそう叫ぶと同時に、「キャー―――――!!」と耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。

こちらへ歩いてきたのは、先ほどすれ違った女子生徒だった。

彼女は血を流して倒れている好未に気付き、ブルブルと震えていた。

「きゅ、救急車……――!!」

彼女は声を上ずらせてそう叫ぶと、ポケットからスマホを取り出した。

『救急車』という単語に一瞬ひるんだ翔。

逃げるなら今しかない。

あたしは翔に背中を向けて階段を駆け上がった。
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