恐愛同級生

「俺のこと知ってた?」

「クラスの女の子達が五十嵐君のことを隣のクラスまで見に行ってたよ」

「クラスの女の子達か……。鈴森さんは見に来てくれなかったの?」

「あたしは……五十嵐君みたいにカッコいい男の子とは縁がないから」

「そんなことないって。つーかもう、俺らに繋がりができたしさ」

「繋がり……?」

「そう。お互いの共通の趣味」

彼はそう言うと、持っていた本を顔の横に寄せて笑った。

その笑顔につられてあたしまで笑顔を浮かべていた。

「鈴森さんが読んでた本だから気になって読んでみたけど、その本面白いね。まだ出だしだけど、主人公が家を出たあとのシーンがすごい気になる」

目を輝かせて本の話をする彼にほっこりした気持ちなる。

「家を出るところまではまだ読んでないんだけど、その前までは読んだよ」

「あ、悪い。ネタバレした?」

「ううん、全然大丈夫!」

「よかった」

くったくなく笑う翔につられてあたしも微笑んだ。

あたし達はその日を境に、度々図書室で顔を合わせるようになった。
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