ミュゲ
いつもは壁越しに、互いの姿すら見えない状態でスピーカーで話していた侍女が、いくつもの南京錠を外していく。
ゆっくりとそちらに目を向ければ、
スピーカーで必要事項だけ話していた若い侍女と、白髪交じりになった侍女が揃っていた。
白髪交じりの侍女は涙を浮かべながら躊躇いもなく私に抱きついてくる。
「ミジュさま……!!」
その声に、姿に、温かさに、私はハッと懐かしい記憶を思い出した。
「カ、カッシュ?! カッシュ婆さんなのね!!」
活気溢れた40歳前半だったカッシュは、その温かさを持ち合わせたまま、56歳の女性になっていた。
「ご無事で何よりです…っ。私はずっと姫さまの身を安じておりました……!」
私は驚きすぎて何も反応できないでいたが、だんだんと頭が回ってきて、ジワッとくるものがあった。
目の前のその優しげな目元から震えて流れ落ちる涙を、そっと拭いあげながら私は微笑んだ。
「会いたかったわ、カッシュ……迎えに来てくれてありがとう。
あなたこそ元気そうでよかったわ!」