クール上司と偽装レンアイ!?
あの八橋は関西支社から出張で来た人がお土産に持って来たものだった。

みんなで食べてって言われたから、新人の子が各自の机に配ったんだけど、なぜか神崎さんの分だけが無かった。

神崎さんのお土産が無いのはそれが初めてじゃなかったから、私はずっと気になっていて、ついに新人の子に注意をしたんだった。

新人の子は純粋に忘れていただけだったけど、一人だけ忘れるってのが意地悪く感じて、少し嫌味を言ってしまった。

神崎さん、その時の事見てたんだ。

結局八橋は数が足りなくて、私の分をそっと神崎さんの机に置いたんだけど……あの時、神崎さん何も言わずに食べてたような覚えが有る。

「俺、八橋苦手だけど、要らないってさすがに言えなくて、10年ぶりくらいに食べたんだよな」

「き、嫌いだったの?」

それじゃあ私の行動ってただの迷惑でしか無かったて事だよね?

……かなり間抜け。

ガックリする私に、神崎さんは珍しく饒舌に語り出した。

「八橋は嫌いだけどお前の気遣いは結構嬉しかった。他にもさり気無く仕事を手伝ってくれたりしてただろ? 見当違いの事も有ったけど、そういう積み重ねでいつの間にか好きになってた」

顔を上げ、神崎さんの目を見ると、優しさや労りを感じる事が出来た。

だからか彼の言葉を素直に信じられた。
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