クール上司と偽装レンアイ!?
そう決意して、忙しい週初めの仕事を始めた。

でも目の前の席に座っているのは、週末ずっと一緒に過ごしていた恋人。

ときめいてしまうのは止められない。

こんな事じゃいけないって思いながらも、つい視線を向けてしまう。

葵は海外の仕入先と交渉中なのか、流暢な英語で会話をしている。

そんな姿も素敵に見えてたまらない。

ああ、私、本当に重症だ。

うっとりとした気持で見惚れていると、電話を切った葵が私を見つめて来た。

仕事が始まって目が合ったのは初かもしれない。

ドキリとする私に、葵は短く言った。

「広瀬さん、先週頼んだ見積り依頼するの忘れてただろ?」

「え……」

「ドイツ支社に連絡してって頼んだだろ?」

あ……そう言えば、そんな指示を受けていた。

私、どうしたんだっけ?

週末前に溜まった仕事は全て片したはず。未着手の仕事は無いはずだけど、海外関連は何もしていない。
記憶が無い。

どうしよう!

おろおろと机の中を探り、資料を捜す私に、神崎さんは溜息混じりに言った。

「もういい。依頼はしておいたから。それより朝のデータ抽出を急いで」

「は、はい……すみません」

項垂れる私をチラッと見ると、葵はパソコンに向かって何か入力し始めた。

もう私を気にする気配は無い。


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