クール上司と偽装レンアイ!?
首を傾げる私に、神崎さんは苛立った様子で言った。

「全部箱を開けて一つ一つ数えろなんて言ってないだろ? 未開封の物はそのまま返品すればいいんだし」

「……そうなんですか?」

「未開封のものが数量不足でもうちの責任じゃないって交渉出来るだろ? 本気で9000個数えるつもりだったわけ?」

「……はい」

馬鹿にされた様に言われてショックだった。
私の確認方法は先輩から教えられたもので、問題があるなんて考えた事も無かったから。

でも神崎さんの言う通り、このやり方じゃ時間ばかりかかってしまって効率が悪い。

「馬鹿正直なのもいいけど、少しは頭使って仕事しろよ」

「……はい」

言われっぱなしで悔しいけど、言い返せない、私の要領が悪いのは事実だから。

昔からそうだった。
ちゃんとやってるつもりなのに、肝心なところで失敗しちゃったり、人より作業が遅かったり。

落ち込んでいる私の隣で、神崎さんはスーツの上着を脱ぎ、それを簡易イスの背もたれにかけた。

「広瀬さんはリストに記入して」

神崎さんはそう言いながら、シャツの袖をまくる。

もしかして一緒に作業してくれるの?
私より沢山の仕事を抱え、忙しいはずなのに。

キツイ事言っては来るけど、神崎さんって実は優しいのかもしれない。

そんな事を考えていた私は、

「早く」

神崎さんに急かされて慌ててリストを挟んであるファイルを手に取った。


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