クール上司と偽装レンアイ!?
「うん。今日なんて午前中だけで3回も怒られたし」

「3回も? そんなに厳しくされてるの?」

真希ちゃんは驚きを隠せないようで、大きな瞳を見開いて言う。

「厳しいよ。本当に今まで通りの態度で。ミスしちゃった私が悪いんだけどやっぱり落ち込むよ」

「え、彩がミスしたの?」

「うん。先週手配したものに手違いが多くて……多分いろいろ悩んでたからだと思うんだけど」

「そりゃあ、彩が悪いね。怒られて当然」

「……」

葵に続いて、真希ちゃんも結構厳しい。

「つまり彼は公私をきっちり分けていて、彩はプライベートに左右されちゃうって事だよね。社会人として神崎さんが正しいんじゃない?」

「そうだよね」

私だって頭では分かってるけど、葵の割り切り方が見事過ぎて、戸惑ってしまった。

「まあそんなに気にしてるなら彼に言ってみたら? 話し合いは大事だって気付いたんでしょ?」

真希ちゃんがそう言った直後注文していた鍋焼きうどんが届いて、更に店員さんに相席を頼まれてしまい、恋愛相談は終了となった。

大人しく熱々のうどんを食べながら考える。

私はどうしてこんなに気にしてるんだろう。

真希ちゃんも言ってる通り、客観的に見たって葵の態度はそれ程おかしくないのに。
むしろ駄目なのは私の方だ。

自分でも分からないこの穏かじゃない感情は何だろう。

相手が期待した態度じゃないからって、いちいち落ち込んで……まるで子供みたい。
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