クール上司と偽装レンアイ!?
残されたのは広くて艶やかな光沢の机の前に正座する私。そして障子を背にして立つ葵。

……気まずい。

でも何か言わなくちゃ……何かを……。

おろおろとそんな事を考えていると、葵が近付いて来て、さっきまで藤原さんが座っていた場所に座った。

机を挟んで向きあう事になり、葵の表情が更に良く見えるようになる。

「何で藤原とこんな所に居るんだよ」

低い声は怒りの証のようだと思った。

「帰る途中に偶然会って……」

「それはさっき聞いた。誘われたからって何で簡単について行くんだよ」

「……」

「それになんで仕事を放って帰ってんだよ」

「……今日必ずやらなくちゃいけない事は終らせたから。残業する気になれなくて」

そう言うと葵は呆れたのか、重い溜息を吐いた。

「俺にムカついてんだろ?」

「え?」

「昼間キツイ事言ったから」

「そういう訳じゃ……」

「嘘つくなよ。揉めてから俺の事一切見なかったし、態度で分かるんだよ」
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