クール上司と偽装レンアイ!?
「自分が忙しい時でも周りへの優しさや気遣いを忘れない彩は凄いと思う。俺には出来ない」

葵は言葉を選んでいるのか、いつもよりゆっくりした口調だ。

「でも彩は自分にも甘いだろ?」

「え?」

「後輩を責めなかったのと同じ感覚で自分も許されると思ってるだろ?」

葵の言葉にハッとした。

その通りだったから。私は無意識に自分の基準で判断していた。

それに葵は私の彼だからって、特別扱いが当然だって……甘えてた。

「俺に責められて過剰に反応するのはそのせいだ。もし彩が真壁や俺の立場だったら責めたりしなかったはずだからな」

「……」

「彩の優しさは長所だけど、それは他人に対しての時に限る。自分自身に甘いのは許されないし、彩の評価が下がるだけだ」

「だから……あんなに怒ったの? 私が気付いてちゃんと考えるように?」

葵は頷きながら続ける。

「今日真壁に責められてるお前を庇わなかったのは真壁の言い分が正しいと思ったからだ。もし仕事以外の事や、理不尽な事であんな状況になってたら直ぐに助けてた。逆にあの場で俺がお前を庇ったら周りはどう思う?」

葵の言う通り、皆が真壁さんが正しいと思うなら、

「葵が私を贔屓して理不尽に真壁さんを攻撃したと思われる」

私の言葉に、葵はそうと頷いた。

「彩は俺に庇われて楽な仕事だけをしたいなんて思ってないだろ?」

葵の言葉、今度は素直に心に入って来る。
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