クール上司と偽装レンアイ!?
“事情を聞かずに言い過ぎた”とか“あれは後輩のミスだったから仕方ない”とか私がさっきまで望んでた言葉をかけて貰ってる訳じゃない。

でも、葵が私の事を想ってくれてるのは伝わって来る。

葵は誰よりも私の事を見ていてくれたんだ。

それなのに私は自分が傷付いた事ばかりに敏感になって葵を責めてしまった。

自分の甘えに気付きもせずに。
子供っぽい自分が嫌になる。

「彩はバイヤーになってひとり立ちしたいんだろ? だったらもっと頑張れ」

項垂れていた私は、続いた葵の言葉に驚いて顔を上げた。

「……どうして知ってるの?」

「見てれば分かる」

葵は労るような目をして言う。

その瞬間それまで我慢していた涙が溢れて止まらなくなった。

別府課長にダメ出しされても大人しく聞いていた。

後輩が先にアシスタントを卒業してバイヤーになっても、頑張ってねって笑顔で応援した。

でも……本当は悲しかったし情けなかった。

認めて貰えない自分が、追い抜かれて置いていかれる自分が。

でもそんな気持惨め過ぎて誰にも言えなくて、気付かれたくなくて興味無いふりをしていた。

それなのに葵は気付いてたんだ。


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