クール上司と偽装レンアイ!?
「遅くまで残って勉強してたのも知ってた。製品の知識をつけようとしてたんだろ?」

「……」

上手く声が出せなくて無言で頷く。

私は交渉や企画が苦手だから、せめて知識だけは一番になりたいと思った。

効果はほとんど無かったけど。

葵は立ち上がると、私の隣に来てそっと腕を回して来た。

「彩が努力してるのは分かってる。その努力が実ればいいと思ってる」

背中に回された腕から、囁く声から葵の気持が伝わって来る気がした。

「……ごめんなさい。私、勝手にいじけて、逆ギレしてた」

涙声で言うと、葵がフッと笑ったような気がした。

それから更に強く抱き締められる。

「いいよ。彩が怒りをぶつけて来るのは心許してるからだって分かってるから」

「……」

「もう泣くなよ」

葵はそう言うけど、泣かす様な事ばかり言われたら涙も止まらない。

でも、これは悲しいだけじゃない、本当の優しさに触れて零れた幸せな涙だと思う。
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