クール上司と偽装レンアイ!?
「後姿で直ぐに分かった。思わず追いかけてきちゃった」

朝井さんは葵の目の前で立ち止まると、微笑みながら言った。

少し首を傾げるその仕草は私より年上なのに可愛らしくて、思わずドキっとする程だった。

こんな姿見たら葵は男だからもっとクラっと来ちゃうんじゃないかって心配になる。

でも、葵は予想に反して浮かない表情だった。

「こんな場所で大声で名前呼ぶなよ」

……気にするところ、そこなんだ。

不機嫌そうな葵に、それでも朝井さんは気にした様子も無く話しを続けた。

「ごめん。でも同じ社内なのになかなか葵と話すチャンス無いし、発見して嬉しくなちゃったの」

う、嬉しくなった?……そんな事言うなんて、朝井さんてもしかして今も葵の事好きなのかな?

何しろ以前付き合ってたんだし。

そう言えばどうして二人は別れたんだろう。

そんな事よりもし彼女が未だに葵を好きだったら、私どうすればいいの?

比べられたら全く勝つ自身が無い。容姿も仕事もどう贔屓目に見たって負けてるし。

朝井さんも……そう思ってるんじゃないかな。

さっきから私の方を一度も見ない。気にもしてない態度で葵との会話を続けている。

葵の隣に居るんだから見えないはずは無いのに。

もやもやしながらも二人の間に割り込むなんて真似は出来ないから、一人であれこれ考えては凹んでいると、葵が少し大きな声を出して朝井さんの話を遮った。
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