クール上司と偽装レンアイ!?
「……前に帰れなくなる程飲んだ時有ったでしょ? 二年前の同期の忘年会。あの時彩言ったんだよ。もう二度と騙されたくないって。都合良く扱われたくないって」
「そんな事私言った?」
「うん。やっぱり覚えてないんだ。あの時の彩は本当に酔い過ぎだったからね。でもあれは本音だったと思うよ。いつも言えない心の叫びだって思ったよ」
忘年会で異様に盛り上がって悪酔いした記憶は有るけど、叫んだ記憶はまるで無い。
でも真希ちゃんが今回の件を隠す事無く言って来た事情は分かった。
私が……言葉は悪いけど葵に丸め込まれて騙されない様に、悩みながらも話してくれたんだ。
「……近い内に、話し合ってみる。ありがとうね、教えてくれて」
ストレートに問い詰めたら葵は何て答えるんだろう。
もし望まない返事が来たら、私はどうすればいいんだろう。
それからはもう葵達の話題には触れず、久しぶりに沢山飲んだ。
最近の慢性的な疲労のせいか、今夜は酔いが回るのが早かった。
足元がフラフラするし、呂律も回らない。
まずいかもと思い始めた11時過ぎ、葵から連絡が入った。
今から会社を出るって話だったけれど、会話途中に私の状態を察したようで、迎えに来ると言ってくれた。
「葵、来るって」
電話を切って報告すると真希ちゃんは少し驚いた顔をした。
「今から?」
「うん、会社出るところみたいで、今日車だから」
「……そう。こんな時間まで仕事じゃ疲れてるだろうに、彩の事心配してくれてるんだね」
「……うん」
「噂が真実じゃないといいね」
真希ちゃんがポツリと言う。
私も心からそう願った。