クール上司と偽装レンアイ!?
葵はその場に腰を落とし、私と目線を合わせるようにした。

「……どうしたの?」

葵が会社でこんな態度を取る事って今まで無かったから驚いた。

「あと30分で終らせるから、待っててくれないか?」

小声で言う葵に私は戸惑って俯いた。

葵は私の異動が決まった事を知ってるんだ。

きっとその事で話が有るんだ。

落ち込んでる私を慰めようとしてくれてるのかもしれない。

葵が側にいてくれると私は嬉しい。

でも今はどうしてか一人になりたい気持ちが強くて、そんな自分の気持ちがよく分からなかった。

私はどうして直ぐに「待ってるね」って言えないんだろう。

モヤモヤした気持で返事を出来ないでいると、突然別府課長の大声が聞こえて来た。

「神崎、トラブルだ! 直ぐに設計部と打ち合わせするから、お前も出ろ」

別府課長は葵の返事を待たずに、自分の席のノートパソコンを抱えると、大股でフロアを出て行った。

その背中を見送ると葵は気まずそうな顔で私に言った。

「悪い。当分帰れないから夜電話する」

「私の事は気にしないで。トラブル上手く解決するといいね」

少しホッとした気持で微笑みながら言うと、葵は私をじっと見つめてから別府課長の後を追ってフロアを出て行った。

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