クール上司と偽装レンアイ!?
「広瀬の業務の引継ぎについて神崎と話してある程度調整した」

「はい」

「雑用は若手社員で分ける事にするから簡単でもいいからマニュアル作っておいてくれ」

「はい。昨日から進めています」

別府課長は満足したように頷いた。

「広瀬にしては珍しく素早いな」

「……」

「それでメインのアシスタント業務の方だけど、それは後任者に1週間で引き継いでくれ」

一週間……少なく感じる。

私が三年以上やってた事って、たった一週間で伝えられると思われてるんだ。

昨日から続く体が冷たくなる感覚が襲って来る。

「どうした?」

「いえ、何でも無いです……それで後任は誰ですか?」

購買部の中に私と同じアシスタントは何人かいる。

その内の誰かに引き継ぐと思ったんだけど別府課長は私と入れ違いに購買部に入る人が居ると言った。

「派遣の方が入るんですか?」

一週間という短期から購買業務経験有りの派遣社員が来るのかと思った。

「違う。朝井まどかが購買のメンバーになる。しばらくは広瀬の後を継いで神崎のアシスタントをしてもらう」

別府課長はごく普通に発言したけど、私は声が出せなかった。

冷たい空気の塊を飲んでしまったように、体がどんどん冷えて行く。

ドクンドクンと心臓が音を立てる。

朝井さんが私の代わり。

葵のアシスタント。

どうして? 頭の中はただそれだけで別府課長の言葉が遠くで聞こえた。


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