クール上司と偽装レンアイ!?
「ごめんね昨日電話に出れなくて。なんだか凄く疲れて寝ちゃったんだ」

「大丈夫なのか?」

葵は低い声で心配そうに言う。

「全然大丈夫って感じじゃないけど、仕方ないと思ってるよ」

どうしてか葵にまで強がってしまった。

本当はボロボロなのに、顔が見えないせいなのかな。

「……彩はよくやったよ。異動にはなったけど努力した事は新しい部署でも活かせるから」

「うん。ありがとう」

「……明日の午後からまどかが引継ぎに来るから」

「そうなんだ……早いね」

「少しでも早く購買の仕事に慣れて欲しいって別府課長の考えだ」

「別府課長は朝井さんに期待してるんだ」

ダメな私が出て、朝井さんが入って別府課長は喜んでるのかな。

卑屈な考えに沈みそうに成る私に、葵が厳しい声で言った。

「彩、変な事考えるなよ? 彩の頑張りは別府課長も認めてた。ただ会社としては業務の構成上彩の異動が最適だって話なっただけだ」

「うん……」

葵に反論はしなかったけど、今の言葉は受け入れられなかった。

やっぱり電話じゃ上手く気持を伝えられない。

上辺だけの会話になってしまっている気がする。

せっかく葵と話せたのに、いつもの様に気持が穏かにはならなかった。

私は信じようとか前向きになろうとか、ただ自分に言い聞かせて無理をしてるだけで、心の中に燻ったいい様の無い感情は消えることは無かった。

< 184 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop