クール上司と偽装レンアイ!?
なくしていたもの
葵は本当に忙しそうだった。

別府課長と共に対応しているトラブル。

元々進めていた藤原さんとの連携の青陽社の案件。

それからデイリー業務に、朝井さんへの指導。

それらをこなすのに、とても疲れているようだった。


毎日電話はくれるけど、会う機会は持てなかった。

私は朝井さんとの引継ぎが苦痛で、お昼に真希ちゃんに愚痴を聞いてもらっていたけど、もう精神的に限界に近かった。

異動したくないってあれ程願ってたのに、今はもう早く購買部から去りたくて仕方なかった。

「このやり方は間違ってると思うけど」

新しい内容の引継ぎをすると、朝井さんはそんな言い方をして、決まって私を否定する。

一日の中で何度も“違う”って台詞を言われる。

私のストレスは、そうやって地味に溜まり、大きく膨らんでいった。

違うって言葉。
今まであまり気にして使っていなかったけど、大嫌いになってしまった。


嫌いと言えば、朝井さんが私の事を嫌っているのは明らかだった。

葵の事が有るからか、元々私みたいな性格が嫌いだからなのか分からない。
お互い本音を見せる機会は無かったから。

でも、朝井さんは私以外のメンバーとは上手くやっていた。

引継ぎ6日目になるともうすっかり購買部に溶け込んでいて、業務の方もあと期間は一日残っているけど、伝える事は何も無くなっていた。



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