クール上司と偽装レンアイ!?
精密機器メーカー【クレイ・コーポレーション】の購買部では今日もバイヤー達が忙しく働いている。

入社3年の私はまだ担当を持っていないアシスタントの身なんだけど、それでも毎日仕事に追われてあっと言う間に時間が過ぎて行く。

仕事を取って来る営業部門との打ち合わせ。
製品を加工する製造部との打ち合わせ。

それらで決定した情報を元に最適な仕入先を探して、必要な材料を買うのが私達の仕事だ。

その最適ってのが、コストや信用度等トータルで考えて判断しなくちゃいけないから結構難しい。

アシスタントの私の一存では決められないから、担当バイヤーに指示を仰がなくちゃいけないんだけど……。

今抱えている案件のメイン担当を確認する。

“神崎葵”

一覧表を目で追ってその名前を発見した瞬間、小さな溜息が漏れた。

出来れば話しかけたくない相手だ。


彼は先月横浜支社から転勤して来たんだけど、私は未だまともに会話をした事がなかった。

席は目の前だし、年もそれ程変わらなそうだし、何より仕事で関わりが多いんだから普通なら1ヶ月も有れば親しくなりそうなものなのに、彼に限っては例外だった。

彼の周りにはいつもあからさまな拒絶のオーラがある。

それを超える事はいけない事のような気がして、私は彼に近寄れない。


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