クール上司と偽装レンアイ!?
歓送迎会が終り、二次会に行く人。帰宅する人がそれぞれの方向に進む中、私は葵を探していた。

最後にちゃんと挨拶をしたかった。

もうすっかり軽蔑されてしまったかもしれないけど、この前の事を謝りたくてキョロキョロと辺りを見回す。

ようやく見つけた葵の隣には、朝井さんが寄り添っていた。




朝井さんは葵とやり直す為、告白すると言っていた。
今から二人でどこかに行くのかもしれない。

そんなの……嫌だ。

二人を止める勇気は無いのに、目を反らして立ち去る事も出来ないでいると、視線に気付いたのか葵が私の方を振り向いた。

夜の頼りない灯りの下でも、葵の表情が変わったのが分かる。

体が固まってしまった様に動けない私に、葵が足早に近付いて来た。

「彩、帰ろう」

葵は朝井さんを振り返る事もなく私に言う。

最後に会話した時、葵はとても恐い顔をしていた。でも今は穏かな顔で私を見下ろして来る。

……怒ってないの?

私に愛想を尽かしたんじゃないの?

だらりと力の抜けた私の手を葵は取った。

「今日は飲みすぎてないよな?」

優しく問いかけられ、胸が痛んだ。

頷くと葵は私の腕を引いて歩き出す。

いろいろ聞きたい事が有るのに、今は上手く声が出ない。

ただ葵に着いて歩いていると、背後から足音が近付いて来るのが聞こえ、同時に高い声が辺りに響いた。
< 202 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop