クール上司と偽装レンアイ!?
葵は私をじっと見つめて来た。

それから朝井さんに視線を戻す。

「そこまで言いたい事が有るなら聞くから言えよ」

冷たい声だった。

私なら怯んでしまいそうな。それでも朝井さんは強気な態度を崩さなかった。

「私は葵とやり直したい。その気持は変わらないわ、もう一度考えて」

朝井さんはもう私の事は目にも入っていないようだった。葵だけを見つめている。

こんな所に居たくない。強くそう思ったけど葵は私の手を離してくれないまま、迷い無い様子で朝井さんに言った。

「俺はその気は無いし、この先も気が変わる事はない」

「どうして? 理由を聞かせて」

「見て分からないのか? 俺には彩が居るだろ」

そう言いながら、葵は私の腕を掴む手に力を入れた。

葵の気持ちが伝わって来るような気がして、私も繋いだ手に力を込める。

私達の態度に苛立ったのか、朝井さんは顔を歪めた。

「私と彼女の違いは何?」

「違い?」

葵はなぜか嘲笑する。

それが朝井さんをムキにさせたのか、一際高い声が響く。
< 204 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop