クール上司と偽装レンアイ!?
「責めなかったのは、俺にとってまどかが他人になってるからだ」

「他人? でもそれならどうして私が呼んだ時来てくれたの?」

「……もっとはっきり言った方がいいのかよ?」

優しさの欠片も無い葵の口調に朝井さんは一瞬怯んだけど、直ぐに気を取り直したように頷いた。

「聞きたいわ」

葵は諦めたように息を吐いてから、口を開いた。

「俺はどうでもいい相手に対して、怒ったりしないんだよ」

「どうでもいい?」

「まどかの呼び出しに応じたのは二回だよな。一度目は今の関係をはっきりさせたかった。もう呼び出すなって言ったはずだ。二度目…昨日の事については説明の必要もないだろ? 何て言って俺を呼んだのか思い出せよ」

「じゃあ……もう私の事は何とも思ってないの? 他人って事?」

朝井さんの声は酷く震えている。

「そうだって言っただろ」

朝井さんはこんな終わりを予想もしていなかったんだろう。血の気の無い顔で呆然と葵を見つめている。

「……私達は他人じゃないでしょ? あの頃の葵は誰よりも私を大切にしてくれていた。それなのに葵は怒ったままたった一度の間違いも許してくれないの?自分は絶対間違えないの? 過去を後悔してる私の気持ち、葵は想像も出来ないでしょ?」
< 206 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop