クール上司と偽装レンアイ!?
真実
葵は大通りでタクシーを停めると、戸惑う私を後部座席に押し込んだ。

自分も乗り込むと、いつかの様に運転手に行き先を告げる。

「田町まで」

どうやら葵のマンションに向うようだ。

朝井さんとの会話……私には意味の分からない点が有って、完全には理解できなかった。

葵と朝井さんの関係は私が想像していたものとは違っていた。

隣に座る葵は流れる景色に目を向けていて、何を考えてるのか読み取れない。

聞きたい事は沢山有るけど、今すぐには聞けない。

広がる夜景を眺めながら、葵の部屋に着くのをじっと待った。



東京タワーを視界の端に映しながら、二人並んでソファーに腰掛ける。

冷たい皮の感触が、乱れる思考をはっきりさせてくれるようだった。

「さっきはごめん、あんな会話を聞かせて」

葵は心配そうに私を見つめながら言う。

「でも彩に見せた方がいいと思ったのも事実だ。俺とまどかの関係をいつも気にしてただろ?」

「うん……葵は朝井さんの事が凄く好きで、彼女を失って仕事も手につかないほど荒れたって聞いたから」

「彩が聞いたのは、横浜支社に異動になった時の事だろ?」

頷くと、葵は悲しそうに目を細めた。

「知りたいか?噂じゃなく本当の事。彩にとっては気分の良い話じゃないだろうけど」

「知りたい。聞いて苦しむ事になるかもしれないけど、自分の悪い妄想に悩まされるよりは本当の事と向き合いたい」




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