クール上司と偽装レンアイ!?
「過去の事を話す前に言っておくけど、昨日まどかの呼び出しに応じたのは、彩の事で話が有るって言われたからだ」
「私の事?」
「ああ。口実かもしれないって分かってたけど、無視も出来なかった。彩が異動する日まで問題を起させたくなかったし、心配だったから」
「私の為、だったの?」
朝井さんの言い方では、全く違う印象だった。
それに私と葵の関係をはっきりとは知らなかったはずじゃないの?
戸惑う私の前で、葵は緊張したように息を吐いてから、話しだした。
「四年前、付き合ってた頃はまどかの事を本当に好きだった」
葵の言葉は私に鋭い痛みをもたらす。
私は手を握り締めて、続きを待つ。
「上手くいってると思ってたけど、まどかが心変わりした。藤原を本気で好きになったんだ」
「藤原さん?」
まさか……だって藤原さんは葵と仲が良くて、朝井さんにとっても同期で。
「まどかは結構あからさまに藤原に近付いてたけど、藤原は相手にしなかった。けどある日無視出来ない
事が起きた。当時全社員を対象に新規製品の企画を募っていて、俺の企画書を藤原に流したんだ」
「うそ……そんな……」
時々ある企画書の募集は社員にとって企画力と発案力をアピール出来る機会だ。
立場に関係なく良い企画書を出せば、自分の製品が流通する事になる。
やる気に溢れた社員はこぞって企画書を出すんだけど、その企画を盗むなんて有り得ない事だった。
しかも朝井さんは葵の彼女。こんな裏切りってない。
「藤原は企画書を不審に感じたのか、まどかから受け取らなかったけど、結局俺にばれて大きな問題になった」