クール上司と偽装レンアイ!?
「大変かもしれないけど、品質保証の課長はうちの会社唯一の女性課長だ。その下で働くのは彩にとってプラスになる」

「唯一の?……そうなんだ」

「真壁なんかはかなり意識してる相手だけどな。あいつは出世欲が強いから」

「真壁さんか……仕事は出来るけどいつも機嫌が悪いよね。私が居なくなったら攻撃先が無くなって益々機嫌が悪くなりそう」

半ば独り言の私の呟きを聞き逃さず、葵は苦笑いを浮かべた。

「心配無い。今日はまどかを相手にやり合ってたから」

「えっ? 朝井さんにって、だって二人は同期でしょ?」

「真壁としてはそんなの関係無いんじゃないか? まどかも気が強いから大丈夫だろ?」

「葵は知らん振りしてるの?」

「関係無いからな」

葵はあっさりと言い、グラスに入っていた水を一口飲んだ。

「真壁さんってどうしていつも怒ってるの?」

「どうせ藤原絡みだろ? 最近は特に荒れてるんじゃないか? 藤原に女が出来たから」

「……ええっ?」

どうでも良さそうな態度の葵の言葉だったけど、私は驚いて思わず高い声を出してしまった。

だって……あの藤原さんに女って。凄くモテルのに特定の人を作らなかった藤原さんが。

一体誰が藤原さんの気持ちを動かしたの?

「そんな驚く事か?」

コクコクと頷き、私はテーブルに身を乗り出した。

「藤原さんの彼女って社内の人?」

「まだ彼女じゃないけどな、あいつの片思いだし」

「か、片思い? あんなに完璧な藤原さんが……それで相手って誰なの?」

葵はなぜか不満そうに眉根を寄せる。

それから素気ない口調で言った。
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