クール上司と偽装レンアイ!?
「なんだ、お前も居たのか」

突然ガラリと口調を変えた藤原さんの発言に驚いた。

「悪かったな邪魔して」

続く冷やかな声。

こ、この声は……確認しなくても分かる、神崎さんだ。

今までどこに居たんだろう。ずっと席に居なかったから帰ったかと思ってたけど。

それにしても……邪魔ってどういう意味?

疑問に思っていると神崎さんと目が合った。

黒い瞳がじっと私を見つめている。

私の心臓は一気に脈打つ。

藤原さんに対するドキドキとは違う。

神崎さんに見つめられると、目を反らす事も出来なくなる。

見つめ合って数秒。

神崎さんは、それはクールに言った。

「広瀬さんって結構大胆なんだな。意外」

だ、大胆? 

意外って、さっき藤原さんにも言われたっけ。

よく回らない頭にそんな事が浮かぶ。

「社内じゃ誰が見てるか分からないし気をつけろよ」

そこまで言われてやっと気付いた。

藤原さんとかなり接近してる事に。

しかも藤原さんの手は私の体に添えられたままだし。

「ご、誤解です!」

すぐさま否定したけど、神崎さんは無反応で、そのまま荷物を纏めて帰ろうとしている。

やだ……神崎さんに変な勘違いされたくない。

そう思うけど、何て言っていいのか分からなくて声が出ない。

困っていると藤原さんのからかうような声がした。
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