クール上司と偽装レンアイ!?
「広瀬彩さん」

真壁さんは燐と通る張りの有る声で私の名前を呼んで来た。

「は、はい」

既に迫力に圧されている私はビクビクと頷く。

すると真壁さんはあからさまな軽蔑の目で私を見て言った。

「突然だけど今日からしばらく藤原君は出張なの。だから進行中の青陽社の件は私が代わりに担当すわ」

「あ、そうなんですか……」

緊張した割りに仕事の話だったんで拍子抜けした。

良かった、文句言われなくて。

ホッとしていると真壁さんが相変わらずよく通る声で言った。

「あなた藤原君の出張の件知っていたの?」

「いえ、知りませんでした」

昨日、車で送って貰った時もそんな事言ってなかったし。

でも真壁さんがフォローに入るのが決まっているのなら、藤原さん自身が事前に知らせてくれてそうな気がするけど。

「昨日の夜中、仙台の工場でトラブルが有ったの。彼はその対応で朝一番の飛行機で向ったわ」

夜中に知らされて朝一の飛行機って……藤原さん大変だな。

でもそれなら尚更私が知ってる訳ないと思うけど。

真壁さんはどうしてこんな質問をするんだろう。

顔を曇らせた私に、真壁さんはゾクッとするような冷たい微笑みを見せた。
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