クール上司と偽装レンアイ!?
「ねえ、本当に神崎さんと付き合ってるの?」
ランチにやって来た定食屋の片隅で、私は執拗な尋問を受けている。
いつもは社食を利用しているから、周りに聞こえないか気になって込み入った話は出来ないけど、この定食屋なら安心して内緒話が出来る。
私に尋問をするのは同期で設計部の大塚真希ちゃん。
真希ちゃんとは気が合って、お互いプライベートもよく知ってる関係。
だから、今回の神崎さんとの噂が信じられないらしく、しつこく事情を聞いて来る。
「神崎さんって彩がいつも言ってる理想の男と全然タイプ違うよね? 何で付き合う気になったの?」
「それは……」
真希ちゃんの言う通り、神崎さんは私のタイプじゃない。
私が好きなタイプは優しくて明るくて、思いやりの有る人。
神崎さんのイメージはクールで一人が好きで……なんか正反対ってくらい違う。
答えられないでいると、真希ちゃんが急かす様に言った。
「どっちから付き合おうって言ったの?」
「え……」
「もったいぶらなくてもいいでしょ? 早く教えてよ」
せっかちな真希ちゃんは待ちきれないのか身を乗り出してくる。
私はなるべく早口を心がけ、実は…と今回の成り行きを説明した。