クール上司と偽装レンアイ!?
「広瀬、お前さっきから神崎をチラチラ見てばかりだな。そんなに神崎が好きか?」

「えっ?……あ、あの……」

う、嘘でしょ?

こんな大勢の前で大声で。

しかも、神崎さん本人の目の前で!

あまりにショックで倒れてしまいそうだった。

でも周りのみんなはひやかすように笑っていて、深刻になってるのは私だけ。

別府課長に怒る事も、神崎さんに弁解する事も出来ない雰囲気。

走ってこの場から逃げたいけど、そんな事をしたら変に思われる。

何も動きが取れなくて、ただ俯くしか出来ない。

私が何も言わないからか、別府課長は神崎さんが席を外した途端、更に調子付いて迫って来た。

「あとで神崎に可愛がって貰えよ。俺が言っておいてやるから」

……これって完全にセクハラだよね?

無神経な発言にいやらしい目付き。

今ほど別府課長が嫌いになった事は無い。

怒鳴ってしまいたい。

でも……ここで私が暴れたら神崎さんにも迷惑がかかる。

それにこんな気持になっても私には人と言い争う勇気が無いんだ。

どうしようも出来なくて、私はテーブルの上の目に付いたグラスを手に取り一気に飲んだ。
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