クール上司と偽装レンアイ!?
冷たい空気漂う夜道を一人で歩いてく。

フラフラと、でも早歩きで。

少しでも早くあの店から遠ざかりたくて大通りを突っ切り、駅までの近道の脇道に入る。

別府課長にも、いつも嫌なポジションを押し付けて来る購買部のみんなにも会いたくないと思った。

それから……神崎さんにも。

朝井さんとあんな風に親しくして。

私が居るの、分かってるのに……無神経過ぎる。

冷たすぎる。

二人が笑顔を交す光景が頭から離れない。

……もう嫌だ!


振り払う様に駆け出した瞬間、足元がよろけて派手に転んでしまった。

思ったよりお酒が体に回ってるんだ。

立ち上がれない。

コンクリートの道路に打ち付けた足も、手も、何もかもが痛くて。

「……うっ……」

あまりに自分が情けなくなって涙が出て来た。

私、何やってるんだろう。

どうしてこんな事になっちゃったんだろう。

神崎さんに告白なんてしなければ良かった。

初めから何の期待も無ければ、きっと今ここまで辛くなかった。

恋が叶ったって感じた瞬間を知らなければ良かった……。

涙が止まらなくて、もう道路につっぷして泣き出しそうになった時、

「おい、何やってんだよ?!」

頭上から怒鳴り声が降って来た。
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