クール上司と偽装レンアイ!?
「……っ」

勝手に涙が出て来てしまう。

ずっと我慢していたせいか、せきを切ったように。

「お、おい」

神崎さんは慌てた様に私の顔を覗き込んでくる。

こんな泣き顔見られたくないのに。

手で顔を隠すと、さっきより近くで神崎さんの声がした。

「なあ、なんで泣くんだよ」

その声は本当に困っているように感じた。

私の気持、分かってないの?

いろいろと勘が鋭い神崎さんが分からないなんて、どれだけ私に感心が無いんだろう。

更に悲しくなって、もう何もかもどうでもいいって気持ちになった。

「神崎さんが冷たいから!」

「……俺に怒ってるのか?」

ヤケになって強気な発言をしたせいか、神崎さんは怯んだような声を出した。

「だって……私の気持知ってるのに、前の彼女とイチャイチャしたり、“まどか”なんて名前で呼んだり……私には広瀬さんって他人行儀なのに」

今までにたまりにたまった不満を口にしたら止まらなくなった。


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