クール上司と偽装レンアイ!?
出社した途端、不機嫌そうな神崎さんに一枚の書類をつきつけられた。

「これ手配したの広瀬さんだろ? ミスしてるけど」

現実の神崎さんの声は冷たく、眉間にシワが寄った険しい顔をしている。

渡された書類には確かに私の名前が記載されていて、急いで内容を確認すると信じられない事に、発注数量を一桁間違ってしまっていた。

必要数は1,000個だったのに、10,000個も手配していた。

「ど、どうしよう……」

一気に血の気が下がった。

9,000個もの返品。こんな大量の在庫をかかえる事になるなんて。

最適な数を最短で手配するのが購買の仕事なのに、こんなミス……。

「不要品は回収するしかないだろ。もう手配したから」

慌てる私に、神崎さんは冷静に言った。

「え……」

「午後戻って来るから数を確認して仕入先に返送して」

「え、返品出来るんですか? 9000個も?」

「交渉した、結構文句言われたけど」

「……すみませんでした」

神崎さんは素気なく頷くと、さっさと自分の席に戻ってしまった。

私も浮上出来ない気持のまま席に着く。

沢山の人に迷惑をかけてしまった。

神崎さんにも。

ミスをした私が関係部署に謝らなくちゃいけないのに、全て代わりにやってくれたみたいだし。

……自己嫌悪。

仕事もちゃんと出来ないのに、あんな夢を見たりして。

気が緩んでるのかな?
しっかりしないと。


< 9 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop