クール上司と偽装レンアイ!?
「座れよ」

神崎さんは部屋の中央の黒い三人がけのソファーに私を座らせ、自分はどこかに行ってしまった。

少し硬い皮の感触。

このソファー、コルビジェだ。インテリア雑誌で見た事有る。

神崎さんってインテリアに凝ってるのかな。

初めて見る彼の部屋に感心を奪われキョロキョロしていると、いつの間にか神崎さんが戻って来た。

スーツから動きやすそうな黒いセーターに着替えていて、手にはマキロンとガーゼを持っていた。

私の隣に座ると、何の躊躇いも無く言った。

「そのタイツ脱げよ」

「……え」

「え? じゃなくて、このままだと消毒し辛いと思わない?」

それは思うけど!

でも、一人暮らしの男の人の部屋に来ていきなりタイツを脱ぐなんて。

神崎さんが変な意味で言ってるんじゃ無いって分かってるけど、でも“はい、¨脱ぎます”なんて出来るはずがない。

「早くしろよ、血が止まってないだろ?」

モタモタしている私に、神崎さんは少し苛立ったように言う。

その言葉でハッとして膝を見る。

血と土でグチャグチャであまりに汚い膝。

こんなのこの高級ソファーに付けてしまったら大変だ。

恥ずかしがってる場合じゃない。

「すぐ脱ぎます! でも、ちょっとあっち向いてて下さい」

流石に神崎さんの視線を浴びながらスカートの中に手を入れる程思いきれない。

神崎さんは私のお願いを聞いてくれて、後ろを向いてくれた。

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