好きなだけじゃ、だめ。
私
眠い目をこすりながら伸びをする。
部屋の窓からは朝の光が差し込んでいた。
『ふぁ~......ねむ、』
こんな理想的な朝なのにも関わらず、私の口から出たのは素敵さの欠片もないセリフだった。
まだ半開きの目をベッド脇の時計に向けると、短針は7の数を指している。
時刻は7時ジャストだった。
『やっば...』
慌てて時計の横にあったテレビのリモコンを手に取る。
電源をつけてチャンネルを切り替えた。
「皆さーんっ、おはようございます!
今日も一日頑張ろうね!」
『おはよ...春くん、』
そう小さく呟いた私の声は、テレビの音によってかき消された。
今私が見ているのは毎週月曜日、朝七時からやっているミニバラエティ。
放送時間10分という短時間番組だが、高視聴率番組だった。
何故なら出演者は今をときめくアイドルグループ、“FLASH”。
5人体制のグループで支持者は主に中高生~20代前半。
最近は主婦層のファンも増えているらしかった。
画面越しに見る彼らにぼーっと目を走らせて、自嘲気味に笑う。
そして「行ってらっしゃい」とキラキラな笑顔で締めくくる彼らがふっと消えてCMになると、静かにテレビ画面を消した。
今日も私の一日が、始まる。