好きなだけじゃ、だめ。



眠い目をこすりながら伸びをする。

部屋の窓からは朝の光が差し込んでいた。

『ふぁ~......ねむ、』

こんな理想的な朝なのにも関わらず、私の口から出たのは素敵さの欠片もないセリフだった。

まだ半開きの目をベッド脇の時計に向けると、短針は7の数を指している。

時刻は7時ジャストだった。

『やっば...』

慌てて時計の横にあったテレビのリモコンを手に取る。

電源をつけてチャンネルを切り替えた。










「皆さーんっ、おはようございます!

今日も一日頑張ろうね!」









『おはよ...春くん、』










そう小さく呟いた私の声は、テレビの音によってかき消された。

今私が見ているのは毎週月曜日、朝七時からやっているミニバラエティ。

放送時間10分という短時間番組だが、高視聴率番組だった。

何故なら出演者は今をときめくアイドルグループ、“FLASH”。
5人体制のグループで支持者は主に中高生~20代前半。
最近は主婦層のファンも増えているらしかった。

画面越しに見る彼らにぼーっと目を走らせて、自嘲気味に笑う。

そして「行ってらっしゃい」とキラキラな笑顔で締めくくる彼らがふっと消えてCMになると、静かにテレビ画面を消した。



今日も私の一日が、始まる。
< 2 / 8 >

この作品をシェア

pagetop