もう一度あの庭で~中学生によるソフトテニスコーチング物語~
そうして体育館に入ってきた小柄な生徒。
にこやかに言い放つ。
「佐伯。副キャプテンが部を乱す様なことしないでくれよ」
「大森……」
大森は佐伯の横をすっと通り過ぎると翔太に近づいた。
「こんにちは。バド部のキャプテンやらせてもらってる大森です。君は入部希望者かな?」
にこやかながらも威厳ある大森の態度に、騒がしくなっていた体育館が静まる。
「いえ、そういうわけではないです。
場を乱してしまってすいません」
翔太は微笑み返すとラケットを大森に返した。
大森はまるで何事もなかったかのように部員たちに振り返る。
「さぁ、ぼさっとしない。
練習を再開するぞ」
「おぉぉぉぉおっ!!」
大森に激励された部員達の士気があがる。
佐伯はその後も翔太の姿が見えなくなるまで翔太のことをにらみ続けていたが、その度に大森がこそっと何かを耳打ちしていた。
賑やかさを取り戻した体育館を背に、翔太とアヤは校庭へと向かっていくのだった。
「おもしろいやつだな。
佐伯のスマッシュをいなす動体視力とラケットワーク……何かやっているのは間違いないが、願わくはうちの部に来てほしいものだな」